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統計はこうしてウソをつく【ジョエル・ベスト】

  • 2009/04/17(金) 18:49:14

統計はこうしてウソをつくだまされないための統計学入門(原題:DAMNED LIES AND STATISTICS)
ジョエル・ベスト 著
林大 訳
白揚社(2002年)

(2009年4月17日読了)
統計および統計数字がいかに社会的に構成されるかということについて書かれている。
統計にだまされないためにはどんなことに注意すればいいのか、さまざまな例を用いて解説している。
この注意は、素人だけでなく実際に統計を扱おうとする専門家も注意しなければならない点であるので、大学生や院生が読んでもためになるだろう。
著者は社会学者なので、取り上げられた例はどれも社会調査等だが、科学的事実も社会的構成を免れ得ないので、科学者もこの書で発せられた問いを自問したら良いだろう。

一応一般向けの書なので、素人がどのように統計に向き合うべきかの答えが最後に書いてあるが、それは「批判的(否定的)に統計に向き合う」というおきまりの啓蒙主義であった。
確かに論理的に考えて、批判的思考は最善である。
だけど、啓蒙主義と言うのはコストがかかり、結局は煽動に取って代わられる脆弱な解決法であることは、18世紀以来の歴史的事実だろう。

誰にでもできて、最善なやり方ってないものかなあ

統計はこうしてウソをつく―だまされないための統計学入門統計はこうしてウソをつく―だまされないための統計学入門
(2002/11)
ジョエル ベスト

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進化論を拒む人々【鵜浦裕】

  • 2008/08/06(水) 17:37:12

進化論を拒む人々現代カリフォルニアの創造論運動
鵜浦 裕 著
勁草書房(1998年)

(2008年08月04日読了)
自分が進化生物学を専門の1つとしていること。メインの博士論文以外に科学と社会についての論文を書かなくてはならないこと。宗教と神、形至上学に昔から興味があること(形至上の思考が得意という訳ではない)。
といった流れで勉強中に勧められた本。

以下メモ

創造論運動
担い手:ファンダメンタリズム(原理主義)のプロテスタント(アメリカ)
関連のある思想:人工中絶廃止、伝統的家族制度の復活

重要人物1:W.J.ブライアン
下院議員から国防長官まで。民主党*
政界引退後、キリスト教ファンダメンタリズムのスポークスマンになる

この書は創造論vs進化論論争の中で表面化した大きな事件(裁判)についてのルポタージュ

1.1920年代の反進化論州法とスコープス裁判
1920年代にオクラホマ、フロリダ、テネシー、ミシシッピー、アーカンソー州でそれぞれ反進化論的な州法が成立。
「バトラー法」:テネシー州1925年3月成立。公立学校で創造説を否定する理論のいっさいを教えてはならない。

スコープス裁判:「生物学教員」ジョン・トーマス・スコープスが授業でヒトの進化にふれて逮捕された。判決は有罪。

反進化論州法は1960年代まで残り続ける。根拠:合衆国憲法修正条項第一条(国家と宗教の分離)。スプートニクショックと関係あり?

クリエショニストの立場
ヤング・アース派:世界は7日で創造された。地球の年齢は約6千年。
ロング・アース派:聖書の時間記述は比喩、または現在と時間の流れ方が異なるとして、地質学的な地球の長い歴史を認める。

2.創造論大学院取り消し
経緯:創造研究所はカリフォルニア州から私立大学の認可を受けて、大学院教育で創造科学を教え、学位を授与していた。州教育長がその認可を取り消す活動を始めた。

重要人物2:ビル・ホーニッグ
州公教育長。スキャンダルによって認可取り消しの裁判は失敗した。
重要人物3:ヘンリー・M・モリス
創造研究所創設者。当時所長。彼の「創造科学は進化学と同程度確かな科学的学説」発言が現在まで影響を与えた。

3.ケニヨン教授追放

重要人物4:ディーン・H・ケニヨン
サンフランシスコ州立大学(カリフォルニア州)教授。担当の生物学入門過程の授業でインテリジェント・デザイン説を教えていた。
インテリジェント・デザイン説提唱者。インテリジェント・デザイン説とは「科学研究の文脈で創造説の信仰告白を「神」という言葉を使わずに行うこと(筆者要約)」。

経緯:1992年、ケニヨン教授に対して、学科から「創造論教育の禁止、担当授業の変更」を命令された。一方的な手続きであったため、最終的に「学問の自由」の見地からケニヨン教授は罷免された。

注意:現在も残る問題として、創造論者や信仰を持つ人物に対して、教育機関で過剰な人事差別が行われている。この事件はその表面化。

4.ヴィスタ教育委員会乗っ取り

経緯:1992年、カリフォルニア州ヴィスタ市教育委員会選挙でファンダメンタリストが過半数議席を獲得。強引な議決で州教育にファンダメンタリズムを導入。2年後リコールによるファンダメンタリスト達の免職で解消された。

注意:ファンダメンタリストは目的(公教育への宗教の導入。および現状の進化生物学教育と性教育の廃止)を秘匿して当選した(ステルス・アタック戦術)。科学をターゲットとする代わりに、英語、社会の授業に創造論を持ち込むことで成功した。

当時のファンダメンタリストが公教育へ宗教を導入しようとした根拠

六〇年代に宗教が学校から追放されてから、少年犯罪が急増した
(1993年1月21日教育委員会全体会議)


犯罪の急増は事実か?(犯罪の増加が人口増加にリニアならふつう増えているとは言えない)

委員会方針第六〇一九号「科学の教え方について」

A いかなる科学理論もドグマとして教えられるべきではない。いかなる生徒もカリキュラムで提示される理論を強制的に信じ込ませられたり、うけいれさせられてはならない。ドグマとは科学的なテストや反論を受けない信仰体系をさす。
B 科学的な探究心と対話を促進するために、科学の時間には理論に挑戦する科学的証拠が提示されるべきである。
C 神の創造、究極の目的、あるいは究極の原因(The Why)の議論は歴史・社会科学そして/または英語のカリキュラムの適切な時期にふくめられるべきである。


明らかに、創造科学はA、Bに耐えられないが、A、Bを根拠に進化教育を攻撃できる。
生物学教員は反論のために最高レベルの生物学知識を求められるようになる。
cf.教員組合がリコール活動の中心だった。


この書の最後3行に次のようにある

しかしこの問題はあと一度や二度の大裁判でかたづくものだろうか。「もうかたづいた」と言い切るスティーブン・J・グールドとは対照的に、「あと二〇〇年はかかる」とおいう全国科学教育センターの創始者スタンリー・ワインバーグの言葉がいつまでも私の耳に響いている。


実際、アメリカ進化学会では現在も創造論の侵略に警戒し、学会で生物学教育について議論されているそうである。最近は地下活動的に日本にも創造論が入って来ているらしいと聞く。

進化論を拒む人々―現代カリフォルニアの創造論運動進化論を拒む人々―現代カリフォルニアの創造論運動
(1998/11)
鵜浦 裕

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